星空のように

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あれほど緻密に組み立てられた魅力的な話を書ける方なのに、なぜ?

タヒチのブラックパールの似合う女
いまさら恋愛小説を詠む歳でもないと思うのだが、色々な出会いを経験した歳だからこそ判る恋もある。

物語の主軸は更年期障害で苦しむバツイチ45歳の女性版画家と17歳年下の文学系青年。

フランス映画のように美しくも甘い時間の背景には、女性としての表層的衰えを苦にする女心がいじらしく思え、いとしく描かれている。

好い女には若いも老いもない、どんな男も虜にする。

そして男を大きく成長させるのだと確信する。

男が紳士たれと胸を張れるのは、守るべき神聖な女(ひと)が居ることが条件となる。

その女(ひと)とは容姿でもない、年齢でもない、海のように慈愛に満ちた優しさと強さを備えた咲世子のようなひとをいう。

町枝ママが咲世子の恋の終わりを察しての台詞「あなたは見事なパールの女になったねえ。

光を豪華に撒き散らすダイヤモンドじゃなく、内側に引きこんで大切に守るパールの女。

男たちが理解してくれなくても、気にしちゃダメよ。

男の目なんてみんな節穴なんだから」そのパールの女が辿り着いた先はタヒチ。

そこで真珠の女は黒真珠に出会う、それもブラックブルーの真珠。

我々専門家がピーコックカラーと呼ぶ繊細な色合いの、形が少し歪なバロックパール。

再び巡りあえた素樹の手のひらで、咲世子の黒真珠は何時までも輝いていて欲しいと祈ってしまった。

幾つになっても恋は人を成長させる力を持つ。

良質の恋愛小説に出会えたことに感謝します。

とてもよかったのだけれど・・・
主人公と同世代で、自分の年齢の半分くらいの男性に強く惹かれている女性として、咲世子に強く共感しながら読みました。

素樹の持っている、年齢とは関係ない人間としての懐の深さや才能、若さゆえの激しさやあぶなっかさ、かわいらしさの絶妙なバランスに対して、40代女性としての咲世子が自然にのめりこんでいく気持ちが痛いほどわかります。

そして、恋愛を通して自分を受け入れることを通して、すでにひとつの世界を確立してきているはずの咲世子が、さらに新しい自分を作り出してゆくのも、納得が行くものでした。

惜しむらくは、素樹を自分のもとから旅だたさせるためのエピソードでしょう。

そこでの咲世子は、あまりに陳腐で安っぽい。

その安っぽいせりふに対して、「いい女になったな」とかわけのわからない賞賛をする元彼。

そこで、そこまでのこの小説のよさが大幅ダウンという印象を持ちました。

若い恋人が自分を卒業して次の世界に旅立ってゆくことに対する中年女性の思いの深さを、著者は十分想像できていなかったのかも知れませんね。

でも、全体を通しては、中年の女性の生き様を素敵に描いた、いい小説だと思います。

非現実的な人物と陳腐なプロット
まず、主人公の女性が「いい人」すぎる。

家にまで押しかけてきた恋敵に「彼をあきらめて」と言われ、普通素直に受け止めるものでしょうか。

あとは散々な目にあわされたストーカーと話し合いを持って優しい言葉をかけてあげたり。



そして、年下男性が積極的すぎる。

無謀なまでのストレートなアプローチや海外滞在先への訪問。

こんな男性、現実に見たことないです。

その反面で、そんな非現実的な登場人物の周囲で繰り広げられるのはどこかで読んだり観たりしたことのあるプロットのつなぎ合わせ。

パジャマ姿で寛いでいる昔の恋人と現恋人が鉢合わせ、とか別れて連絡を絶った恋人が海外の旅行先へ追いかけてくる、とか昼ドラか?月9か?はたまたハーレクイーンか?というような浅さ。

池袋ウエストゲートパークが大好きで、何度も繰り返し観ました。

あれほど緻密に組み立てられた魅力的な話を書ける方なのに、なぜ?まるで別人のようです。

眠れぬ真珠石田衣良

体重計
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by yukaning1 | 2010-10-02 20:26 | 日記

恋愛のケーススタディ


恋愛のいろんな側面を切り取った短編集。

まさに恋愛のケーススタディーという感じ。

著者のいうとおり、普通の人がした普通の恋愛。

それはそれなりに劇的だったり、せつなかったりする。

何かを狙ったわけでない、記述的なタッチが読者を包んでゆく。

多彩な恋の物語
石田衣良氏初めての短編集にして、初めての恋愛小説。

バラエティーに富んだ優しい恋の話が10編。

社会の闇を描く的なイメージがあったので、こういう恋愛作品も書けるのかと正直驚いた。

「スローグッドバイ」の中で面白かったのはちょっと変わった設定の、「You look good to me」。

チャットのオフ会での出会いをテーマにした話。

「フリフリ」お互いお節介な友達の恋人紹介を避けるため、付き合ってるふりを始める男女の話。

「ローマンホリデイ」ネットで知り合った男女がローマの休日のようなデートをすることになり…という話。

なかなか多彩なラインナップで楽しめた。

ただ、上記の3作品を含め、まだ'作っている'感が見えてリアルさを感じない話が多い。

私としては、この後に書いている「1ポンドの悲しみ」の方がいい。

こちらの方が自然な恋愛に感じる作品が多かった。

石田氏の書いた2つの恋愛短編集作品、読み比べてみてみるのも面白いと思う。

突然の別れより。


さよならデート。

ゆっくり別れましょう、 ゆっくりと築き上げてきたんですから。

この本を読んだあと、当時の彼女とゆっくり別れました。

スローグッドバイ (集英社文庫)
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by yukaning1 | 2010-09-14 20:15