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星空のように

心を問いかけられる

天童 荒太の悼む人

心を問いかけられる

読み進める中で気がついた。静人が巡った死にまつわる事故・事件は、酷似したケースを過去に一度は報道で目にしているものばかりだ。そして忘れていた。何気ない日常の中で、赤の他人の最期を哀れんだ事は数えきれないほどあるというのに、一瞬の幻影のような痛みで記憶は流れていく。静人の行動に共感するしないではなく、とても単純に生と死への問いかけを与えてくれるのが本書だと思う。丁寧にゆっくりと淡々と問いかけられる。自分なりの答えを考えてみた。私は地面を歩くときも、遠い死者の幻影ではなく足元で生きる小さな命の鼓動に気がつきたい。忘却を受け入れる代わりに、今を生きてる少しでも沢山の命に気がつきたい。いつかまた自分の歩み方を問う日がくるような気がする。その時に再び心して本書を開こうと思う。


圧巻の主人公に脱帽。

天童荒太さんに脱帽と言った方が正しいですね。

『悼む人』は登場人物のキャラクターが素晴らしいです。
主人公の青年の対比としての蒔野と言う人物が出てきますが、
蒔野は序盤から私たちを物語へとグイグイ引き込みます。

本書は、主人公を取り囲む周囲の人物の視点で物語が展開されていきます。
母親の死や娘の出産など、いろいろな死生観が出てきます。
特筆すべきは、主人公の死生観です。

成熟していない青年の価値観は自分の経験則から形成されており、
私個人は、その未熟さゆえに陥りそうな主人公の発想に、
想像されたキャラクターとは思えないほど、
非常に人間らしさを感じました。

それだけに、主人公の言葉を本の中でもっと聞きたかったなと、
読後は残念に思いました。

生死について語り振舞う場面の多い作品ではありますが、
私自身は重苦しさを感じずに読め、
主人が次に何を言い出すのかと大変興味をそそられました。

読み終わると、
表紙の挿絵が物語の雰囲気を十分に表しているように思え、
それでこれか、と納得でした。

本の完成度としては5満点で★6つですね。
面白いかどうかっていち読者の視点で★4つ。
納得の直木賞受賞作と思います。

ただし、決してエンターテイメントではないと思います。
唯物論者や物事を深く考えることが嫌いな人には、
心に響かないかもしれません。

でも『悼む人』は、文庫になったら必ず友達にすすめます(文庫派が多いので)。


リアリティある人物描写

いきいきとしたリアリティあるれる人物描写がすごい。
読後は主人公が近くにいる気配を感じるほど。
構想に7年かけたという力作。

悼む人

イイタイ
フィッシュオン!
by yukaning1 | 2010-11-02 22:44 | 話題