星空のように

心がじんわり温かくなる、いとおしい作品

大人の童話か、夢の備忘録か
 9篇の短編の主人公は共通と思われます。童話といっても、現代人である主人公は、毎日会社に行って、決算期には残業したりします。

 一読すると、原石の小さなかけらが、ポイッと目の前に投げ出されたような感じがします。後は読者が磨いてね、ということでしょうか。
 神について語る昔気質の熊、性生活のトラブルを抱えた河童のカップル、壺の中に生息するギャル風女性、さらには人魚などという荒唐無稽なものを登場させますが、語り口は淡々としています。
 個々の話に、何らかの寓意のようなものも感じ取れます。例えば「離さない」では、モノや環境への依存性からの脱却でしょうか。著者の自戒のようにも思えます。

 癒しを求める現代人へのアロマテラピー、みたいなものでしょうか。

いとおしい作品です
心がじんわり温かくなる、いとおしい作品です。
いとおしくてせつなくて、つい涙がでてしまう。クマがしたためるお手紙の最後の描写にいつも涙がこぼれてしまいます。
何かを忘れてしまいそうな時、本当にこの描写と同じだなあと思います。


"熊さん(神様)"と散歩気分にさせてくれる短編集
作者の処女作「神様」を含む夢と"うつつ"が交差する世界を描いた不思議な短編集。作者の子供からの夢や空想が反映された内容とも思えるし、現実の悩みを夢に逃避した形で描いたものとも思える。

各編には、熊、梨喰い虫、叔父の幽霊、河童、魔法のランプ中の女霊、人魚などが人間と区別無く登場する。言動も普通だが、何処となく可笑しい。"熊さんと散歩(「神様」)"なんて童謡のようだ。叔父の幽霊が出て来る「花野」は彼岸の事だろう。彼岸での霊界人と人間との噛み合わない会話が物悲しいと共に"なんとなく"可笑しい。特に「河童玉」は大いに笑えた。河童の悩みも可笑しいが、ウテナさんの反応も可笑しい。そのウテナさんは次編の「クリスマス」にも再登場する。河童玉によって失恋から立ち直ったウテナさんが置いていった壷はアラジンの魔法のランプ(風)。壷から出てくるのは魔人ならぬ、痴情のモツレで死んだ若い(?)女性スミコ。何処から、こうした発想が出てくるのだろう。でもスミコの怨念や日常感覚は少しズレていて、楽しい一編になっている。「星の光は昔の光」は父親が浮気をしている家庭の男の子から、大人の世界を覗いたものだが、メルヘンティックに仕上がっている。でも、チョット切ない。「春立つ」は民俗学味の濃い大人の童話。「離さない」は捕獲した人魚に魅了された男女二人を描いたものだが、奇妙な味なのか悪夢譚なのか読む方も煙に巻かれた様。「草上の昼食」で再び"熊さんと散歩"。

"熊さん"は「神様」なのだ。あるいは、他の登場人物(?)達も。読む者の心を透明にし、夢の世界に浸してくれるメルヘンティックな短編集。

神様 (中公文庫)
川上 弘美

ファー
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by yukaning1 | 2010-10-05 19:24 | 読書